花粉症
目次
- 1. 花粉症とは
- 2. 春と秋の花粉の違い
- 3. 花粉症のメカニズムについて
- 4. 花粉症の症状
- 5. 花粉症の治療薬について
花粉症とは
毎年、花粉症で悩まされている方は多いのではないでしょうか。花粉症は、2種類あるアレルギー性鼻炎の1つで、アレルゲンはスギやヒノキなどの植物の花粉です。これらの花粉が原因で生じる、アレルギー症状となります。主な症状としては、くしゃみ・鼻水・目のかゆみなどです。花粉が飛ぶ季節に発症するので、「季節性アレルギー性鼻炎」と呼ばれます。まずは2種類あるアレルギー性鼻炎について、ご説明してまいりましょう。
■ 季節性アレルギー性鼻炎(=花粉症)
日本における季節性アレルギー性鼻炎の原因物質である花粉の数は、約60種類あるとされています。季節性アレルギー性鼻炎という名の通り、原因となる花粉が飛散する時期のみ、症状が現れます。
<主なアレルゲン>
スギ、ヒノキ、ブタクサ、ヨモギなど
<症状>
一番多いのが、鼻の異変です。くしゃみ・鼻水・鼻づまりが起こります。また、目のかゆみや涙、充血などでお悩みの方も多いです。そのほか、喉のかゆみ、皮膚のかゆみなどの症状が発症する場合もあります。
■ 通年性アレルギー性鼻炎
日本人の約4人に1人が発症している病気です。アレルゲンはダニやハウスダストなど、いろいろあります。アレルゲンが一年中存在しますので、通年症状がみられます。
<主なアレルゲン>
ダニ・家の中のちり(ハウスダスト)・ペットの毛・フケ・カビなど
<症状>
一番多く見受けられる症状は、くしゃみ・鼻水・鼻づまりです。目のかゆみが出る場合もあります。また喘息やアトピー性皮膚炎などと、合併するケースも多いです。
もともと通年性アレルギー性鼻炎だった方が、季節性アレルギー性鼻炎を発症することも多いです。また一種類ではなく、いくつもの花粉に反応する方も増えており、ほぼ通年、アレルギー症状が出ているという方もいます。
春と秋の花粉の違い
花粉症の原因となっている花粉につきましては、実のところ、ほぼ通年飛散しています。ただ、花粉症を発症している方の15%ほどが、春に花粉が飛ぶスギやヒノキの花粉に反応しているので、花粉症=春という印象が強いと思います。
春はスギやヒノキなどを代表する、樹木の花粉の飛散が多くなります。秋はキク科のブタクサやヨモギ、アサ科のカナムグラ、イネ科のカモガヤの花粉が飛びます。これらは、空き地や河川敷、街に多くみられる草花で、9~11月ごろに花粉が飛散します。秋に飛散する花粉に反応していることを自分自身で気が付かず、この時期にウォーキングやジョギングやなどを無防備な状態で行いますと、花粉を吸い込んでしまい、症状を悪化させてしまうケースがあります。
スギ花粉症などの春に飛散する花粉に反応されている方は、秋の花粉症を発症する可能性も高いので、外出する場所を選ぶ・マスクなどの対策をするなど、適切に対処することが重要です。
花粉症のメカニズムについて
- アレルゲンである花粉が身体に入ると、自己免疫において大切な役割を果たしている「マクロファージ」という細胞が異物として食べます。そしてその情報を「リンパ球」に伝達し、リンパ球が異物と判断します。そうすると花粉が次回、入ってきた際に排除できるように、「抗体(IgE抗体)」を作ります。そして抗体は、血液や粘膜内に存在している「肥満細胞」にくっつきます。
- また花粉が身体へ入ってきますと、抗体のくっついた肥満細胞の表面で花粉と抗体が結合します。これを、抗原抗体反応といいます。
- 抗原抗体反応が引き金となり、炎症を起こすヒスタミン、ロイコトリエンなどのアレルギー誘発物質が肥満細胞から発出され、鼻水やくしゃみ、鼻づまりなどの症状を引き起こします。
花粉症の症状
■ 鼻
鼻腔内に花粉が入り込むことで、アレルギー誘発物質が発出され、血管や神経を刺激し症状が出ます。
・くしゃみ
アレルギー誘発物質によって知覚神経に刺激が加わることで、くしゃみ中枢に伝達して鼻腔粘膜についた花粉を排除しようとして、くしゃみが起こります。花粉症で起こるくしゃみは連続し、回数が多いというのが特徴です。・鼻水
くしゃみ同様、鼻腔粘膜についたアレルギー誘発物質を排除するために鼻水が出ます。・鼻づまり
鼻の穴から入った空気は、気管へと流れていきますが、その通り道の表面粘膜がアレルギー誘発物質によって腫れてしまいます。それによって空気が通りにくくなり、鼻づまりを起こします。■ 目
花粉が目に入り込むことで、アレルギー誘発物質が発出され、血管や神経を刺激し症状が出ます。
・目のかゆみ
目のかゆみは花粉症の目の症状の中で、一番多いとされる症状です。知覚神経がアレルギー誘発物質によって刺激されることで、目やまぶたなどに炎症が生じてかゆみが出ます。我慢できずに強くこすってしまう方も多く、結膜や角膜を損傷したり、かゆみが増してしまうことがあります。・目の充血
血管がアレルギー誘発物質によって刺激されることで、血管が広がり、結膜炎を起こして目が充血してしまいます。・涙が出る
目に侵入したアレルギー誘発物質を放出しようと、涙が出てきます。花粉症と風邪の症状の違い
花粉症の治療薬について
■ 内服薬
・抗アレルギー薬(第二世代抗ヒスタミン薬)内服
抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)を内服することにより、症状を軽減させられる可能性があります。
抗ヒスタミン薬の種類
抗ヒスタミン薬には第一世代、第二世代があります。初めに第一世代抗ヒスタミン薬が開発されましたが、脳への影響が大きく、強い眠気や認知機能を低下させるなどの副作用がありました。そのため第二世代が開発され、現在では第二世代抗ヒスタミン薬が主流になっています。第二世代抗ヒスタミン薬は副作用も少なく、効果の持続、アレルギー反応の治療効果も優れています。
第一世代抗ヒスタミン薬
- ・ポララミン(クロルフェニラミン)
- ・アダラックス(ヒドロキシジン)
- ・レスタミン(ジフェンヒドラミン)
第二世代抗ヒスタミン薬
商品名 | 一般名 |
---|---|
アレジオン | エピナスチン |
エバステル | エバスチン |
ジルテック | セチリジン |
タリオン | ベポタスチン |
アレグラ | フェキソフェナジン |
アレロック | オロパタジン |
クラリチン | ロラタジン |
ザイザル | レボセチリジン |
ビラノア | ビラスチン |
デザレックス | デスロラタジン |
ルパフィン | ルパタジン |
・抗ロイコトリエン薬
「ロイコトリエン」という鼻粘膜の炎症や鼻づまりを引き起こす働きを、阻止する薬剤です。特に鼻づまりに効果が期待できるとされており、抗ヒスタミン薬と併用して使うことが多くなっています。眠気などの副作用も少ない薬です。☆当院採用薬には、プランルカスト、モンテルカストがあります。
・漢方薬(小青竜湯など)
セキや鼻水、くしゃみなどの症状が出る鼻炎、風邪の際に使う薬方薬です。身体を温め水分代謝を促すことで、花粉症の症状を抑える作用があります。
眠くなる成分は入っていませんので、抗ヒスタミン薬で起こりやすい眠気などの副作用が起こる心配がないのが特徴です。
【妊婦・授乳婦に対する注意点】
- ・妊娠3週末までは症状を観察し、鼻噴霧用ステロイドを使用します。もし症状が強い場合は、ジルテックなどを服用します。
- ・妊娠4〜7週末の妊婦には、できる限り内服・局所薬の薬剤は使用せず対応します。
- ・妊娠8〜15週末の妊婦には症状を観察し、点鼻抗ヒスタミン薬、鼻噴霧用ステロイドなどの局所点鼻薬で対応します。
- ・点鼻が使用できないケースについては、ジルテック、ポララミンなどをできる限り頓用で用います。
- ・妊娠16週を経過すると、催奇形性リスクはなくなります。しかし薬剤による胎児への臓器障害を回避するために、鼻噴霧用ステロイドを選択するのが理想です。
- ・授乳婦に対しては、授乳中は薬剤を停止すべきという薬剤が多いです。薬剤を使用する場合は、母乳中薬剤濃度/血漿中薬剤濃度のデータが存在しているクラリチンなどの使用が望ましいです。
- ・現在主流となる鼻噴霧用ステロイドについては、連続使用後の薬剤血中濃度は測定限界値以下となっているので、授乳婦に対して安全に使用できると考えられています。
■ 外用薬(点鼻薬)
・局所ステロイド点鼻薬(アラミスト点鼻液など)
ステロイドは副作用が懸念されますが、局所ステロイド点鼻薬については体中に吸収されにくい薬剤です。もし吸収されてもすぐに分解されますので、ステロイドではありますが、全身的な副作用はほぼありません。■ 外用薬(点眼薬)
・抗アレルギー点眼薬(アレジオン点眼液、ザジテン点眼液、パタノール点眼液、アレジオンLX点眼液など)
アレルギー症状の原因物質であるヒスタミンなどの放出を抑制し、アレルギー症状を抑える薬です。アレルギーの症状が出る前から使用するとより、効果を得られる薬です。・ステロイド点眼薬(フルメトロン点眼液)
症状が重症である場合や、角膜に損傷などの症状がある場合などに使う薬です。ステロイド点眼薬は、効果が得られやすい薬剤ではありますが、副作用には注意が必要です。
眼圧の高い方は、点眼薬は使用不可です。
使用する際は眼科への受診をおすすめしております。
花粉症の治療薬(OTC医薬品)について
代表とされる花粉症のOTC医薬品といえば、抗ヒスタミン薬です。抗ヒスタミン薬には、第一世代と第二世代があります。現在多くなってきているのは第二世代と呼ばれる薬剤で、鼻水・鼻づまり・くしゃみに効果があり、症状が軽症のうちから使用すると効果的です。また、眠気や口の渇きのような副作用が出づらい薬が多いのも特徴です。
※鼻づまりに効果があるといわれている抗ロイコトリエン薬は、OTC医薬品は存在しません。
■ 第二世代の抗ヒスタミン薬が含まれている主なOTC医薬品
・クラリチンEX (ロラタジン)
1日1回
授乳中でも使用可能とされている薬です。こちらは、1日1回の服用でよいというのが特徴です。食事の影響も受けない薬ですので、生活が不規則な方でも効果が期待できます。
・エバステルAL(エバスチン)
1日1回 寝る前
眠気はわずかですが、自動車の運転に制限があります。1日1回の服用でよく、手軽さがあります。アレグラやクラリチンより、アレルギー性鼻炎に対する効果が高いので、重症の方向けです。他の薬と比較しますと、眠気が出やすい可能性があるので注意が必要です。
・アレグラFX (フェキソフェナジン)
1日2回
授乳中でも使用可能とされている薬です。判断力や集中力、作業スピードの低下が少ない薬ですので、日常生活への影響が最小限で済みます。
・タリオンAR (ベポタスチン)
1日2回 ◆要指導医薬品
腎臓病の方は、使用できない薬です。眠気はわずかですが、自動車の運転に制限があります。空腹時でも服用が可能という特徴があります。
★自動車を日常的に運転される方は、アレグラFXとクラリチンEXは、眠気が少ないのでおすすめです。
OTC医薬品は、薬によって個性があります。そのため生活スタイルや花粉症の症状に合わせて選択することが求められます。
花粉症のピークといわれる春の季節は、耳鼻科や眼科が大変混雑します。仕事が多忙で受診する時間がない、待ち時間がきつい、毎年同じ薬で症状が落ち着いているというようなときは、薬局・薬店・ドラッグストアなどで手軽に購入できるOTC医薬品は便利です。
ただし、症状が良くならない、悪化しているようなケースは、かならず医療機関を受診するようにしましょう。
薬を使う際に気を付ける点
■ 花粉が飛ぶ前から薬を使用し始める
病気の治療というのは原則、症状が出てから実施します。しかし花粉症については、症状が出る前から予防治療として薬をスタートしてよいとされています。初期療法と呼ばれており、花粉が飛ぶ2週間程度前から服薬することによって、花粉症の症状を軽くする、花粉の飛散量がひどい時期に使用する薬の量を減らす、症状が出る期間を短縮するなどの効果が期待できます。
■ 薬を途中で中止しない
花粉症の症状は、その日の飛散量で変わってきます。飛散量が少ない日が続きますと、一時的に症状が治まったように感じて、薬を止めてしまう方がいます。しかしその後、飛散量が増えますと、症状が一気に悪化します。症状が治まったと感じても、ご自身のアレルゲンである花粉が飛散している時期は、薬を続けて使用することが重要です。
■ 花粉症と風邪との区別がつかないとき
多くの花粉が飛散する春や秋のシーズンは、気温差が大きく風邪もひきやすい季節です。花粉症と風邪は症状がよく似ているだけに、花粉症なのか風邪なのか区別がつかないこともあるかもしれません。このようなときは、かかりつけ医や専門の医療機関を受診するようにしましょう。
■ 花粉症発症における日常生活への影響
花粉症の症状が重くなりますと、仕事や勉強、家の用事が進まない、鼻づまりなどで良好な睡眠がとれない、物事に集中できないなど、日常生活に支障が出てしまうことが多いです。マスクなどの対策、そして薬を上手に使うことで、症状を抑えて日常生活に支障が出ないようにしていきましょう。
毎日の生活の中でできる対策について
■ 花粉飛散量情報を確認しましょう
雨が降ったあとの晴れた日、湿度が低く晴れている日、強風の日、特に12~14時の日中の時間帯などは、花粉飛散量が多い傾向にあります。TVやインターネットなどを利用して、花粉の情報を毎日チェックしましょう。
■ 鼻や目を花粉から防御する
マスク・メガネを活用して、目や鼻が花粉に触れないようにすることが大切です。洋服についても、ニットなどは花粉が付着しやすくなります。木綿や化繊のような、ツルっとした表面の洋服がベストです。
■ 家の中に花粉を持ち込まないようにする
洋服や髪などに、花粉は付着しています。これらを家の中に入る前にキチンとはらって、なるべく室内に花粉を入り込ませないようにします。さらには洗顔、うがい、手洗いを行って、目や鼻などについた花粉も落とします。
また洗濯についても、できれば屋外で干さないようにしましょう。どうしても外干しする場合は、花粉をよくはらってから家の中に取り込みましょう。
コロナ渦において、空気の入れ替えを実施する機会が多々あると思います。どうしても換気が必要な場合は、花粉飛散量が少ないとされる朝や夕方の時間にしたり、窓を少しだけ開けるようにしましょう。空気清浄機を活用するのも、一つの手段です。
花粉症は、長く付き合っていかなければならない病気です。自分に合う対策を取り入れて、上手に付き合っていくのがポイントです。