しみ、肝斑、あざ

老人性色素斑(“しみ”)

老人性色素斑は紫外線を浴びることによってできるシミの代表格です。1センチ四方と比較的大きな色素斑となり、露出することの多い顔や手の甲などにできるのが一般的です。
加齢とともにできやすくなるシミの一種であり、そのため“老人性”という名前が付いています。1センチ四方が一般的な大きさですが、中には5センチ四方といったような大きさになることもあります。
初期の段階では色が薄く目立ちにくいですが、少しずつ濃くなっていきます。
また、通常では平らなですが、時間の経過とともに隆起してくる場合があります。60歳以上になると誰にでもできるシミですが、中には20代という若年齢でもできるケースが報告されています。
加齢によってできやすいシミです。

光線性花弁状色素斑

夏場にできやすいシミです。出現する場所は主に硬や上背部、上腕などです。これらの部位から過度に日焼けした後に出現するシミだということがわかります。
周囲がギザギザしていて花びらのように見えることから“花弁状色素斑”と呼ばれています。海やプールに行く人にできやすいシミですが、基本的な原因は老人性色素斑と変わりません。

雀卵斑

“じゃくらんはん”と読みますが“そばかす”のことです。幼少期に顔に発症することが多く、鼻を中心に両頬、額、唇周辺に広がっていきます。左右対称に広がることが多く、片側だけ弱雀卵斑になることは多くありません。形状は茶色の小さなシミのポツポツと集まったような見た目です。一つの大きさは1ミリから5ミリ程度のもので、ほぼ均等に並ぶのが特徴です。男性よりも女性に見られることが多く、概ね思春期が最盛期となります。その後は広がることはなく、中高年に向けて徐々になくなっていきます。また、日焼けや妊娠によって増えることもあります。発症には遺伝的要素が多いとされていますが、紫外線によっても発症します。特に紫外線を浴びることで増殖したり濃くなったりするので、日々の紫外線には注意が必要です。大人になるとなくなったり薄くなったりするのが一般的ですが、治療も多く行われています。QスイッチルビーレーザーやフィとフェイシャルやビタミンC誘導体ローションの使用、ハイドロキノンクリームの使用などが行われています。これらによって治療することは可能ですが、永久的というわけではなく、紫外線の影響を受けることで数年すると再発することもあります。

肝斑

肝斑もいわゆるシミのひとつです。主に30代以降の成人女性にみられます。両頬を中心にでき、色合いとしては薄茶色の色素斑になります。
老人性色素斑や雀卵斑などと混同しやすく、発症原因は同様に加齢や紫外線によるものとされていますが、成人女性に多いといった特有の要因から、女性ホルモンの影響があると考えられています。
他の要因として、皮膚への過度な摩擦であったり、ストレスであったり、肌に合わない化粧品なども考えられます。
様々な要因があるとされていますが、厳密な発症理由がわからないのも特徴といっていいでしょう。
肝斑ができた場合は、ごしごしこすったりせずにビタミンC誘導体ローションやハイドロキノンクリーム、レチノールクリームなどの外用品が効果的です。
トラネキサム酸、ハイチオール、ビタミンC、タチオンなどの内服薬を処方される場合もあります。
肝斑に適したフィルターを用いたフォトフェイシャルやイオン導入による治療も行われています。

太田母斑

女性に多いシミのひとつですが、青あざのように見えるシミなので一目で太田母斑とわかります。額や目の周り、頬や耳などにできます。稀に白眼にもできます。
出生時にできるとされていますが、そのケースは稀で生後数日から数週間の内に出現する場合と、思春期以降にできることも確認されています。
思春期に出現する場合、多くはホルモンバランスの変化などが理由とされています。また、妊娠・出産及び閉経後に起こる遅発型もあります。
20歳以降にも出現することがあり、治療にはレーザーがよく用いられています。レーザー治療の場合、多くは保険適用外とされていますが、太田母斑の治療の場合、3ヶ月に1度の治療を5回まで保険が適用されます。

遅発性太田母斑様色素斑・ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)

<ADMとは>
ADMは、後天性真皮メラノサイトーシス(Acquired Dermal Melanocytosis)の略です。
ADMもシミの一種なのですが、比較的新しい概念のシミで、別名で両側性太田母斑様色素斑と呼ばれています。
メラニン色素が表皮内に増えてシミとなるのが一般的なシミですが、ADMは真皮内に増えるのが特徴であり、これが大きな違いといえます。真皮のほうが表皮よりも皮膚の深い部分にあり、色素沈着と色素細胞が同時に見られる状態です。シミとして分類されていますが、通常のシミとはできる場所が異なること、見た目的なものもあって、アザに近い存在でもあります。
また、頬上部に左右対称でできやすいことから、発現部位が似ている肝斑やそばかすに間違われるケースもあります。
頬上に斑点状のシミとなるのでそばかすと間違えやすいということですが、通常のそばかすとは明らかに見た目違うため、間違えることは少ないようです。
ADMの特徴として、出現する年齢、色合い、形状、分布などがあげられます。
また、ADMとそれ以外では治療方法や経過が異なるので、最初の見極めをしっかりとおこなって治療方針を立てなくてはいけません。
3ヶ月に1度の治療を5回まで保険が適用されます。
<出現年齢>

ADMの出現は20歳以降に多く見られます。比較されるそばかすの出現年齢が幼少期、老人性のシミや肝斑は20代後半から、そして太田母斑は思春期までに出現することから、出現年齢や時期によって分けることもできます。ただし、出現時期は個人差もあり、気がつけばできていることがほとんどです。

<色調について>

シミの種類を判断するのにもっとも有効なのが見た目です。色調で多くのADMは判断ができるでしょう。一般的にしみやそばかすや肝斑は茶褐色あるいは明るい茶色に見えます。これに対してADMは、彩度の低いくすんだ色調の場合が多く、具体的には明るい茶色ではなく、灰色から若干青みを帯びた褐色といった独特な色合いです。この特徴ある色合いから、しみ・そばかす・肝斑との違いを認識できるでしょう。
また、部位によって色調が若干違ってきます。顔にできるADMは青みがかったものではなく、くすんだグレーが一般的です。
これは、真皮内(表皮よりも深い層)にメラニン色素が存在するからであり、厄介なのはファンデーションなどで隠しにくいという点です。
ファンデーションを塗ると逆に色合いを協調するようになります。素肌と化粧をした場合の見た目が違ってくるのもADMの特徴と言えます。

<形・分布について>

ADMもそばかすも頬上にできるので分布としてはかちあっています。また、混在するケースも少なくないので一般的に“そばかす”として括ってしまうケースもあります。ただし、形は帯状、斑状、地図状といったように様々です。そばかすについては、小さな斑状が多くADMとの判断は可能です。
肝斑や一般的なシミとADMの違いは形や分布だけでは判別がつかないので、それに色合いなども加味した総合的な視点で判別する必要があります。

<肝斑と診断され治療されるADM>

ADMが間違われるケースは肝斑がもっとも多いようです。そして、肝斑の治療に用いられるトラネキサム酸の内服薬やフォトなどの光治療(IPL)は、表皮内と真皮内の違いもあり、ADMには効果がみられないことが多いです。出現時期や色調、形状、分布など、一つひとつはかぶる面もあるのですが、初回での判断が非常に大切です。

扁平母斑

いわゆる茶あざです。周囲の皮膚との境界がはっきりしているのが特徴です。
全身のどこにでも出現しますが、多くは肩や上腕にかけて比較的多く見られます。扁平かつ点状から面状に分布する色素斑で、出生時からある人、思春期に出現するひと、成人以降に出現する遅発性があります。
治療はレーザーを用いられることもありますが、必ずしも満足いく結果が得られないため、経過観察になることが多いです。

蒙古斑

生後1週から1ヶ月ころまでの赤ちゃんのお尻や背中の下部にみられる青あざを蒙古斑といいます。
胎生期の真皮メラノサイトの残存と考えられており、ます。
大半は6〜10歳までに自然消失することが多いですが、成人後も残る場合があります。
特に目立つ場合には、レーザー治療などで色素沈着を薄くすることができます。