ほくろ・皮膚腫瘍

ほくろについて

ほくろは、医学用語で「母斑細胞母斑(ぼはんさいぼうぼはん)」と呼んでいます。
成長過程において、よくできる良性の腫瘍で色素細胞になりきれなかった母斑細胞(ぼはんさいぼう)が増殖することでできます。
良く知られているメラニン色素を生成するメラノサイトが高密度で集まった状態です。
また、イボや脂漏性角化症などと、見た目でほくろと区別がつかないケースも少なくありません。
そういったときは皮膚科、形成外科専門医の診察を受けるようにしてください。
ほくろの状態によって保険の適用が決まります。
一般的に、ほくろが平らであれば保険適用外、隆起したほくろであれば保険適用で除去することが可能です。
医師の判断のもと、治療が必要と判断されると保険適用で治療を受けられます。形状がいびつで引っかかったり、ほくろがあることで生活に支障が出る、急激に大きくなっている、ほくろから出血したりする事がある、目に近くあって視界の邪魔になる、などの症状が挙げられます。また、がんの可能性があるため切除して病理検査に出す必要があると判断された場合も、保険診療になることが一般的です。
ほくろ除去には外科的手術と炭酸ガスレーザーを使用したものなどがあり、ほくろの大きさや状態などによって、治療方法を医師が適切に判断します。

ほくろの治療

ほくろの治療は、ほくろの部位や大きさ、深さなどによって治療法が異なります。大きくは炭酸ガスレーザーと手術治療の2通りの種類に分かれ、どちらかを選択し、ほくろの切除を行います。

炭酸ガスレーザー

炭酸ガスレーザーは“CO2レーザー”と呼ぶこともあります。ほくろの部位に局所麻酔をして炭酸ガスレーザーにて、ほくろの切除を行います。このとき、ほくろの形状に焼灼するだけではなく、切除後の見た目を意識して、切除痕が目立たないようレーザー照射を行っています。

詳しくはこちら

手術療法(保険適応)

ほくろの手術療法は、レーザー照射を行う治療と違って保険適用ができるのが大きな特徴であり、メリットと言えます。ほくろを外科的な手術で摘出し、縫合を行います。縫合方法は、切開の深さによって真皮縫合・表皮縫合に分かれます。傷が最も目立たないように縫合しますが、基本的には切開の深さによって縫合方法が決まります。

ほくろの形状

■Unna母斑
柔らかいふくらんだ形状のほくろで、表面が凸凹しているのが特徴です。母斑細胞は表皮と真皮の間、やや真皮側にありますが、切除方法は部位や深さによってレーザー治療と手術のいずれかを選択することになります。
■Miescher母斑
首から上に出現、主に顔や頭に発生します。最初は平坦ですが、徐々に隆起することが特徴的です。発生したときは青黒色調ですが、徐々に淡褐色・常色に変化していきます。表面は平滑かつ光沢があることが多く、ここから毛が生えることもあります。Miescher(ミーシャー)母斑は、Unna母斑よりも深いところに母斑細胞ができるので、切除方法は部位や深さによってレーザー治療と手術のいずれかを選択することになります。
■Spitz母斑
子どもに発生することが多いのがSpitz(スピッツ)母斑です。ほとんどが幼児期に出現し、出現部位は特定できず、体中どこにでも出現します。突然出現し、成長スピードが速いのですが、大きさは1cm程度で止まります。ダーモスコピーが診断には有効です。悪性腫瘍との鑑別が難しい場合は切除の対象となります。
■Clark母斑
全身に出現するのがClark母斑の特徴です。薄く平らなほくろが特徴的で、大きさは 1センチくらいの大きさになります。色は黒褐色でまれに隆起する場合もあり、形状は楕円形に近い形をしています。切除方法は部位や深さによってレーザー治療と手術のいずれかを選択することになります。
■青色母斑
一般的なほくろと比べると青みがかってやや盛り上がっているのが印象的です。触った感じもやや硬く感じ、中には直径が10mmを超えるくらい大きくなるものもあります。比較的、発症頻度が高いほくろで、幼少期にできることが多く、ダーモスコピーが診断に有効です。治療は手術による切除となります。
■獣皮様母斑
先天的で出生時から存在するほくろです。一般的なほくろのイメージとはかけ離れていて、10cm四方になることもあります。母斑から剛毛が密集して生えることから、“獣皮様母斑”と名付けられました。一部を除いて悪性化するリスクは少ないとされていて放置しがちですが、リスクはゼロではないため定期的な専門医の判断が必要です。また、見た目的な問題、さらには機能的な問題で治療を希望するケースも少なくなく、悪性でなくても治療を行うことも少なくありません。
昔からよく言われるのが、“足の裏のほくろは危ない”というものです。言い伝え的なもので、一般的にそう多くはないために言われることがあるようです。厳密にはそういったことはありません。
ほくろは悪性化するリスクが高いとされていますが、リスク自体は通常の肌と変わりありません。もっとも、ほくろに悪性黒色腫(メラノーマ)が集まりやすい、あるいは発生しやすいのは事実でもあるので、足裏などに急に黒色母斑ができた場合は皮膚科などの専門医を受診するようにしたほうがいいでしょう。

ほくろとよく似た病気

■軟性線維腫
首やワキなどにできることが多い病変です。すれる箇所(摩擦する箇所)にできることが多いので、陰股部などでも見られます。ほくろと間違われがちですが、分類としては“イボ”であり、大きさは1mmから5mm前後となります。触った感じも柔らかく、色も肌色から薄い茶色のような見た目です。ほくろよりも治療は簡単で、炭酸ガスレーザーでの治療が多く見られます。
■神経線維腫
皮膚腫瘍のことで形状は大小様々です。腫瘍というと悪性化することが心配されますが、末梢神経から発生する良性の腫瘍です。単発性と多発性に分かれ、レックリングハウゼン病は、神経線維腫症I型とも呼ばれています。痛みはなく肌と同じ色、あるいはわずかに赤みを帯びた程度です。
■皮膚線維腫
赤褐色で小さく隆起した形状で、固くコリコリしているのが特徴です。表皮下の軟部組織にコラーゲンが蓄積することで形成されます。虫刺されや外傷的なケガがきっかけで出現することが多く、見た目や形状などからほくろと間違われやすいです。
■脂漏性角化症(老人性疣贅)
盛り上がったできもので、茶色または黒色の見た目をしています。高齢者に見られることが多く“老人性イボ”と呼ばれることが多い病変です。ほくろと間違うケースも多いのですが、表皮にできることが多く、かつ多発する(一気にたくさんできる)のが特徴です。肌の老化と紫外線によるものが原因と考えられていて、老人性色素斑から発生することもよく見られます。炭酸ガスレーザーを用いて簡単に治療が可能です。顔や首、胸元にできることが多く、冷凍凝固において治療する場合は保険適用が可能です。大型で隆起性のものでは手術による切除が必要です。
■日光角化症
日光角化症は紫外線の影響を受ける顔や手に発生することが多く、表面がカサカサとしてかさぶたなどを伴い紅くまだら状のシミとして見られることが多いです。
有棘細胞がんという皮膚癌のごく早期の病変と考えられています。日光角化症の治療をせずに放置すると一部の人は有棘細胞がんへと移行する可能性があります。ダーマスコピーの検査で疑われた場合には組織検査を行います。確定診断後
日光角化症の治療には、局所麻酔して病変部をメスで切除する方法か、「イミキモドクリーム」という軟膏を病変部に塗布するという外用療法もあります。
■ボーエン病
ボーエン病は、表皮内有棘細胞癌の一型で、’病変が表皮内に留まる早期がんです。主に高齢者に出現します。赤~茶色味がかった斑で、少し盛り上がっていたり、表面にカサブタが付着していたりします。境界が比較的明瞭で、表層は紅褐色から黒褐色局面を呈し、表面に鱗屑 や痂皮 を付着する。あらゆる部位に発生する可能性があります。確定診断には組織学的検査が必要である。外科的切除が第一選択です。大きさや部位にもよりますが数ミリ離して拡大切除を行います。
■乳房外パジェット病(Paget病)
乳房外パジェット病(Paget病)は乳房,腋窩,会陰部,肛門周囲などに発生する上皮内癌で進行するとパジェット癌になります。陰部や腋などに赤くて湿った病変が生じ、表面にかさぶたがついたり、痒みがあったり、見た目が湿疹似ていることがあります。病理組織検査の結果に基づいて正確に診断し、適切な医療機関へ紹介致します。
■有棘細胞癌
表皮有棘層の細胞が癌化する皮膚癌で、基底細胞癌に次いで発生頻度の高い皮膚癌です。紫外線の影響を受けた頭皮、顔面の皮膚に発生することが多いです。その他に慢性炎症、ウイルス、放射線などが関与していることがわかっています。ダーモスコピー や病理組織検査の結果に基づいて正確に診断し、治療を行っております。
通常病変辺縁より0.5~2cm程度離した手術により切除することが一般的です。基底細胞がんと同様に切除後の皮膚欠損が大きく、傷を縫い閉じることが難しい場合、再建術(植皮もしくは局所皮弁)を行うことがあります。病気の状態に応じた適切な医療機関へ紹介致します。
■基底細胞癌
皮膚癌の一種でもっとも発症頻度の高い腫瘍です。体のどこにでもできますが、顔に発生することが多く、転移することは稀とされています。臨床的な分類では、結節潰瘍型、斑状強皮症型、表在型に分けられ、部位的には表皮、真皮、皮下組織に分かれます。初期的な見た目はほくろと似ているので間違われやすく、発見が遅れがちなので注意が必要です。発症原因としては紫外線や放射線の影響が大きいとされています。いずれにしても、発見後手術による完全切除が必要です。ダーモスコピー や病理組織検査の結果に基づいて正確に診断し、治療を行っております。
通常病変辺縁より3~5mm離した手術により切除することが一般的です。切除後の皮膚欠損に対し見た目を損なわない再建術(植皮もしくは局所皮弁)を行うことがあります。初回の手術で病変の取り残しがないことが確認できれば、その後は定期的な経過観察を行います。場合によっては適切な医療機関へ紹介致します。
■悪性黒色腫(メラノーマ)

悪性黒色腫とは、メラノーマと呼ばれ、皮膚のメラニンという色素を作る色素細胞ががん化した腫瘍と考えられています。癌細胞がメラニン色素を多く産生しているため黒色を呈することが多いことより黒色腫と呼ばれますが、メラニン色素の産生が少ないと褐色~茶色などを呈するものもあり、診断が難しい場合もあります。

転移しやすいので早期発見と確実な治療が求められます。日本人では足底に多く発生しています。悪性黒色腫を疑う所見としては以下のA~Eがあります。

A: asymmetry(左右不対称、不規則形)
B: border irregularity(境界不整)
C: color variegation(色調が濃淡多彩)
D: diameter (大きい、直径6mm以上)
E: evolution(形状が変化してくる。大きくなったり、表面が隆起してきたり、色調が変化してくることです)
病変の観察にはダーモコスピーと呼ばれる皮膚顕微鏡を用います。ほくろと見間違いの多い疾患ですが、所見の数々を精査し、発見次第速やかに専門の大病院へ紹介することになります。

手術療法

当院では、皮膚科専門医、形成外科専門医が患者さんにとって最良の治療法を行なっております。

ほくろ治療にはレーザーを使う方法と手術療法を行う方法の2つがあります。一般的にレーザー治療では難しい場合に手術療法を行うことになります。特に悪性が疑われるケースや、色素が濃くて大きいケースでは、手術療法を行います。
また、完全にほくろをなくしたい場合などは、手術療法を行ったほうがいいでしょう。切開手術となるので局所麻酔を行いますが、その際には血液検査が必要となります。
手術は日帰り手術となります。手術当日は、運動・お酒・入浴・治療患部のお化粧はできません。入浴については、患部に水がかからないように気をつければシャワーは可能です。
切除した部分を縫合しますので、シワのラインに沿った一本の線になります。経過に問題がなければ7〜14日程度を目安にして抜糸を行います。手術痕は数年程度で目立たなくなります。

施術の流れ

  • 診断
    診察によってほくろの状態や大きさを確認します。
    その際に医師が炭酸ガスレーザーか手術療法のどちらの治療を行うかを判断します。
  • 麻酔
    炭酸ガスレーザーの場所は、麻酔シールを貼った後、局所麻酔を行います。
    ※使用しない場合もあり。痛みや刺激に弱い人は診察時に相談してください。
    手術療法の場合は局所麻酔の注射を行います。
  • 施術
    炭酸ガスレーザー:ほくろにピンポイント照射
    手術療法:メスを使用してほくろを除去。切開部分を縫合。
  • 経過
    炭酸ガス
    レーザー:
    ご自宅で1週間程度軟膏を外用。経過観察のために来院してください。 1ヶ月~3ヶ月赤みが残ります。
    手術療法: 1~2週間後に抜糸。

リスク・副作用

炭酸ガスレーザーの治療によるリスクや副作用は以下のものがあります。

  • ・レーザー治療後、一時的にかさぶたが出来る
  • ・赤みや色素沈着ができる(個人差あり)
  • ・レーザー照射部分に凹みや傷跡が残る場合がある

大きいほくろは取り除きたいけどどうしたらいいの?

ほくろと一言で言っても様々なものがあります。ほくろと似ているようでイボであったり、先述したような皮膚癌に直結するようなものもあります。そのため、ほくろ(あるいは似たようなイボ)が出来た場合は速やかに医師の診察を受けるようにしましょう。
先天的なもので医師の判断で放置が可能であっても、変化が現れた場合は、注意が必要です。

例えば以下のものです。

  • ・大きくなった
  • ・範囲が広がった
  • ・色が変わった
  • ・出血がある
  • ・膿のようなものが出た
  • ・かさぶたができる

以上のようなものは、外傷的な要因もありますが明らかに変化が見られるので、医師の診察が必要です。生まれつきであっても、形状などに変化があると何らかの進行が考えられます。

また、良性であっても審美的なことも考えて切除を考える人も少なくありません。一般的に炭酸ガスレーザーが治療としては多く見られますが、多くは保険適用外となるので出費などの点で注意が必要です。

ほくろのがん(皮膚癌)とはそもそも何?

がんは臓器にできるもので、皮膚もひとつの臓器に例えることができます。そして、他のがんと違うことは体の外側にあるので目で見ることができるがんとも言えます。そのため、がんの中でももっとも早期発見がしやすいのが特徴です。ほくろについて、またそれと同様なものについて何か変化があれば一度は医師の診察が必要です。良性であっても目で見て形状に変化がないかといった注意は怠らないようにしましょう。