帯状疱疹

帯状疱疹とは

帯状疱疹はヘルペスウイルスの一種で起こる皮膚疾患です。水ぼうそうと同じウイルスで、誰にでもなりうる皮膚の病気です。

帯状疱疹の多くは、子どものときに感染した水ぼうそうのウイルスが原因で起こります。水ぼうそうが治った後も、ウイルスは神経節に潜んでおり、加齢やストレス、さらには過労などが引き金となって帯状疱疹を発症することが知られています。
一年のうちでも症例が多くあがるのは、夏から秋にかけてです。

発症年齢

成人以降では、50歳以上の方に多く見られます。若い方にも過労や過度のストレスなどで発症する場合があります。
日本では80歳までに3人に1人の割合で発症するとされています。一度かかると再発しないとされていますが、実際には再発例もあり、2回以上帯状疱疹にかかる人も全体の4%から6%に達しています。

症状

帯状疱疹は痛みを伴うことが多く、一般的にはピリピリと刺すような痛みを感じます。症状は先に痛みが出て、それに続いて患部が赤い斑点状となり水ぶくれが帯状にできます。
これが帯状疱疹の名前の由来です。
水ぶくれは粟粒大の大きさから小豆大程度となり、中央にくぼみがあるのが特徴です。
刺すような痛みは、皮膚及び神経の炎症によるもので、症状の改善とともに痛みは消えていきます。

発症部位

体中のどこにでもでき、体の左右のどちらか一方、神経に沿って帯状に現れます。
中でも胸から背中にかけて最も多く帯状疱疹が見られます。
全体の半数以上が上半身に発症しますが、顔や目の周囲にも症状が現れます。

合併症

帯状疱疹の合併症として、発熱と頭痛が現れます。
顔面に帯状疱疹が発症した場合、角膜炎や結膜炎などが発症することがあります。さらに耳鳴りや難聴、顔面神経痛などを生じることがあり、これらをラムゼイ・ハント症候群と呼んでいます。そのため、顔面での帯状疱疹の発症場合には注意が必要です。

以下が帯状疱疹によって起こる合併症です。

○眼合併症
 …角膜、結膜炎、ぶどう膜炎、眼瞼下垂など
○ハント症候群
 …顔面神経麻痺、耳鳴り、めまい、難聴など
○中枢神経系合併症
 …無菌性髄膜炎、脳炎、脊髄炎など
○抹消運動神経障害
 …運動麻痺、筋萎縮、膀胱・直腸障害など
○播種性帯状疱疹(肺炎、肝炎、脳炎など)
 …肺炎、肝炎、脳炎など

帯状疱疹後神経痛(PNH)とは

帯状疱疹の場合、皮膚の症状が収まるにつれて痛みが引いていきます。
しかし、中には刺すような痛みが3ヵ月から6ヵ月程度持続することがあります。
これは、帯状疱疹後神経痛と呼ばれるもので、急性期の炎症などにより神経が損傷されることで起こる後遺症です。
特に50歳以上の人が帯状疱疹を発症すると、その約20%が帯状疱疹後神経痛に移行するといわれています。
さらに、高齢になるほど帯状疱疹後神経痛への移行率が高くなります。

帯状疱疹は周りに感染するか?

帯状疱疹は、体内に潜伏しているウイルスが原因で発症するため、他の人から感染することはありません。
ただし、過去に水ぼうそうにかかったことのない人には、水ぶくれからウイルスが飛び出て、接触感染することがあります。そのため、水ぼうそうにかかったことのない乳幼児への接触は控えましょう。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹の治療には抗ヘルペスウイルス薬が有効です。
ウイルスの増殖を抑える働きがあり、さらに急性期の皮膚症状や痛みを和らげる効果があります。また、短期間での治療が目的のため、発症初期に服薬を開始することで、より早い回復が期待できます。

高齢者がかかりやすい帯状疱疹後神経痛については、鎮痛薬や抗うつ剤などを投与してできるだけ痛みを緩和する治療を行います。
さらに痛みが強い場合、神経ブロックという特殊な治療を行う場合もあります。

日常生活上の注意点

治療するにあたっての注意点です。

  • 十分な睡眠を取ること、栄養をしっかり取ること、できるだけ安静にすることで体の抵抗力を高めます。
  • 患部を冷やすと痛みが増すので、できるだけ冷やさないようにします。
  • 水ぶくれが破れるとウイルスが飛散し、周囲の人に感染することがあるので破らないように気をつけましょう。
  • 水ぼうそうにかかったことのない乳幼児との接触は控えます。

帯状疱疹の症状が出た場合、あるいは疑わしい場合はできるだけ早めに診察することが大切です。
早期発見及び早期治療で症状を軽くすることができ、合併症や後遺症の発症を防ぎます。
特に中高年の方の場合、帯状疱疹後神経痛のリスクを減らします。

帯状疱疹ワクチンについて

水痘ワクチン、シングリックスの2種類のワクチンから選択し、処方します。

水痘ワクチン シングリックス
ワクチンの種類 生ワクチン 不活化ワクチン
接種回数 1回 2回(1回目接種後2か月目に2回目接種)
遅くとも6ヶ月後までには2回目を接種
発症
予防効果
60歳以上で51.3% 50歳以上で97.2%、70歳以上で97.9%
神経痛
予防効果
66.5% 88.8%
長期
予防効果
3~11年 9年以上(現在データ更新中)
料金 7,700円(税込) 22,000円(税込) / 1回
接種できない方 妊娠している方
免疫を抑える治療をしている方等
アナフィラキシーのある方、発熱している方
急性疾患で治療中の方
長所 接種回数が1回
値段が安い
免疫が低下している方にも接種可能
予防効果が高い / 予防効果が長い
短所 免疫が低下している方には接種できない
予防効果が短い
副反応で痛みが強い
接種2回必要 / 値段が高い