円形脱毛症

円形脱毛症とは

円形脱毛症とは円形や楕円形に髪の毛が抜けてしまう脱毛症です。何の前触れもなく発生し、10円玉ほどの大きさで、脱毛部分と発毛部分の境目がはっきりしています。また皮膚疾患を同時に患っている方も多いです。単発で発生するケースから複数箇所できる症状まであり、重度まで進行するとまゆげや体毛にまで発生します。
円形脱毛症は自然には改善しにくいので、毛が抜けてきたと思ったら病院で診察を受けましょう。

原因

円形脱毛症にはいくつか原因が考えられます。1つの原因のみならず、複合的要因で発症するケースもあります。

■ 自己免疫疾患
通常の免疫反応は、体内にウイルスや細菌などの異物が入ってきた際にTリンパ球という細胞が異物を攻撃することで体を守ります。しかしこの細胞に異常があると、毛根を異物と誤認して攻撃するため、健康な髪の毛が抜け落ちてしまうと考えられています。
ただしこのような過剰な攻撃がなぜ起こるのか、そのメカニズムは解明されていません。
■ アトピー素因
アトピー性皮膚炎やアレルギー性鼻炎、気管支炎などアトピー性疾患を発症している人もなりやすいです。円形脱毛症の約40%が本人もしくは家族にアトピー素因があると言われています。
■ 精神的ストレスによる影響
精神的なストレスも円形脱毛症を発生させる要因です。精神的ストレスを受けると、体は抵抗するために交感神経が働きます。心拍数が上がり体温が上昇し、ストレスと闘う準備を始めます。
しかしストレスが強過ぎたり、長い期間受けていると、交感神経に異常が起き、血管が収縮され血行が悪くなります。そのため毛根への栄養が滞り脱毛が発生すると考えられています。
■ 遺伝的要素
円形脱毛症の家族がいると、自分も発症するケースがあります。ある調査では発症者の約8.4%が、家族も同じ病気を患っていたという報告があります。家族の中でも親等が近いほど発症しやすいと言われ、円形脱毛症の患者が一等親の親族にいる場合、二等親の親族よりも、発症する確率が10倍高まると考えられています。
■ 出産後の女性ホルモン値の変化
出産による女性ホルモンの減少も要因のひとつです。妊娠中は女性ホルモンの数値が通常よりも100倍以上高まっており、出産すると一気に正常値に戻ります。女性ホルモンは発毛を促すため、減ると脱毛しやすくなります。毛周期との関係で、出産から3ヶ月程度で抜け毛が増えます。産後に頭髪全体の量が減るのと同時に円形脱毛症になる人もおり、アトピーを患っているとさらに発症しやすいです。また出産後の育児によるストレスも、円形脱毛症を誘発します。

子どもの円形脱毛症

円形脱毛症患者のおよそ4分1は15歳以下の子どもといわれています。低年齢での円形脱毛症は治りにくく、根気よく治療を続ける必要があります。
子どもの円形脱毛症はストレスが原因であることが多く、家族はストレスを軽減するようにサポートします。病院での治療に加え、ストレスの原因が明確な場合は、家族でじっくり話し合い解決方法を模索するようにしましょう。髪の毛が抜けるのは精神的ダメージも大きいため、ウィッグなどを使用して外見をカバーすることも有効です。
子どもによっては、ストレスで自分で髪の毛を抜く「抜毛症」になることもあります。円形脱毛症と抜毛症を混同しないよう、病院で診察を受けて何の病気か特定してもらいましょう。円形脱毛症は脱毛部分と発毛部分の境目がはっきりしていますが、抜毛症は区別がつきにくいです。

症状

円形脱毛症には特徴的な症状があります。以下に円形脱毛症の特徴をあげました。当てはまる項目が多いほど円形脱毛症の可能性が高いため、早めに受診をしましょう。

  • 突然髪の毛が部分的に一気に抜ける。(円形脱毛症は徐々に薄毛になっていくわけではなく、部分的に髪が一気に抜ける。)
  • 痛みなどはなく、気づかないうちに脱毛している。
  • 円形や楕円形に脱毛しており、髪が生えている部分との境目がはっきりしている。
  • アトピー性疾患(アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など)を患っている。

円形脱毛症の種類

円形脱毛症には、1箇所のみ発生する単発型、複数箇所にできる多発型、頭皮全部が抜け落ちる全頭型、体毛なども抜け落ちる汎発型があります。

■ 単発型
頭部の1箇所に円形または楕円形の脱毛斑ができるタイプです。頭部のみならず、眉毛などに発生するケースもあります。老若男女に発生し、発症後80%の方が1年以内に改善しています。円形脱毛症の中では軽症ですが、稀に多発型に移行する人がいます。
■ 多発型
円形や楕円形の脱毛が複数箇所に発生するタイプです。単発型から移行する人も多く、再発を繰り返しやすいです。多くは完治まで半年から2年程度かかると言われています。複数箇所の脱毛が結合して1つの大きな脱毛斑に進行することがあります。
■ 全頭型
脱毛が頭部全体に広がり、全ての髪が抜け落ちるタイプです。ここまで症状が進行すると非常に治りにくく、治療にも時間がかかります。自己ケアでの改善は難しいので、病院で診察を受けて、適切な処方を受けましょう。
■ 汎発型
円形脱毛症の中でも一番症状が重いタイプです。頭部のみならず眉毛やまつげも抜け落ちます。やがてひざやひじなど全身の毛が抜けます。治療の難しい症状ですので医療機関に受診しましょう。汎発型も治療に長い時間がかかります。

治療法

根治する薬は作られていませんが、様々な治療法があります。以下、それぞれについて説明します。

■ 内服薬の使用

円形脱毛症に効果があると言われている飲み薬を服用します。

  • ・ステロイド内服薬
  • ・抗アレルギー薬
  • ・セファランチン
  • ・グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合薬
ステロイド内服薬は高い効果が見込める一方、副作用が強いので子どもには処方しません。抗アレルギー薬はアレルギー反応を抑える薬です。セファランチンはアレルギー反応抑制や血行促進作用があります。グリチルリチン、メチオニン、グリシン複合薬は、炎症やアレルギーを抑える薬です。
■ 外用薬の使用

下記の外用薬は、円形脱毛症の治療に使用される場合があり、効能が確認されています。

  • ・ステロイド外用薬
  • ・塩化カルプロニウム外用薬
  • ・ミノキシジル外用薬
塩化カルプロニウム外用薬は育毛剤にも含まれる成分で発毛を促します。ミノキシジル外用薬も発毛効果が期待できる薬です。
■ 冷却治療
ドライアイスや液体窒素を脱毛部分に当てて、免疫細胞の働きを抑えて発毛を促します。ドライアイスを直接当てる、液体窒素を含んだ脱脂綿を貼る、スプレーするなどの方法で行います。治療には軽く傷みが伴いますが、副作用がほとんどない方法です。
■ 中波紫外線療法

中波紫外線療法は紫外線の「免疫の働きを調節する作用」を利用した治療方法です。円形脱毛症のほか、掌蹠膿疱症、アトピー性皮膚炎、乾癬、尋常性白斑などの難治性疾患に有効です。照射範囲が患部に限られるので、健康な皮膚へ影響を与えることがありません。従来の紫外線療法で改善しにくかった皮膚病変にも効果があり、安全性が高いことも確認されています。

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対処・予防法・注意など

円形脱毛症になったらひとりで抱え込まず、病院に行って相談しましょう。円形脱毛症は基本的に皮膚科を受診します。また発毛や薄毛の治療を行うクリニックでも相談できます。

■ 正しいヘアケア
普段から良い頭皮の状態を保つように心がけます。頭皮をマッサージすると血行を促進し、髪にも栄養が行き届きやすくなります。ストレスで血行が悪くなっている場合も多いので、毎日欠かさずマッサージはしましょう。
また、日頃から頭皮に刺激の少ないシャンプーを使用してください。髪を洗うときは爪を立てるのではなく、シャンプーの泡でマッサージするようにして洗っていきます。その後シャンプーの成分が頭皮に残らないようによくすすぎ、洗った後はすぐ髪を乾かすようにします。
■ 規則正しい生活
早寝を心がけ、夜更かしは避けましょう。睡眠時間が短いと体の疲れが取れずストレスにも繋がるため、早く眠って十分な睡眠時間を確保します。また適度な運動で血行を促進しましょう。さらにシャワーだけではなく湯船に浸かった方が、毛穴が開いて汚れが取れます。
食事は栄養バランスを考えて食べるようにします。ビタミンとミネラルは髪に必要なので、野菜や果物、根菜類を食べましょう。刺激物や脂っこいもの、体を冷やすものは避けた方が良いです。