貨幣状湿疹

皮膚科専門医 監修コラム

貨幣状湿疹|丸くてかゆい湿疹の原因・治し方・人にうつるのかを専門医が解説

保険診療 予約不要 公開日:2026年8月2日/最終更新日:2026年8月2日
駒沢皮膚科クリニック 清水顕院長
監修:清水 顕(院長/医学博士・日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医) 医療法人社団 誠清会 駒沢皮膚科クリニック 院長
一般皮膚科・美容皮膚科・アレルギー科

「すねに10円玉くらいの丸い湿疹ができて、かゆくて眠れない」「たむしだと思って市販の水虫薬を塗ったら、かえって悪化した」——このような相談で来院される方が多くいらっしゃいます。コインのような円形の湿疹は貨幣状湿疹(かへいじょうしっしん)の可能性があります。

貨幣状湿疹は、見た目がたむし(体部白癬)とよく似ているにもかかわらず、治療薬が正反対という点が最大の落とし穴です。取り違えると悪化します。当院は院内に顕微鏡を備えており、真菌がいるかどうかを受診したその日に確認できます。

貨幣状湿疹とは

貨幣状湿疹は、直径1〜5cm程度のコインのような円形・楕円形の湿疹が、境界のはっきりした赤い盛り上がりとして現れる皮膚疾患です。「銭状湿疹」「貨幣状皮膚炎」と呼ばれることもあり、医学的には湿疹・皮膚炎群のひとつに分類されます。

強いかゆみをともない、表面には小さなぶつぶつ(丘疹)や小水疱ができ、掻くとじくじくした滲出液が出てかさぶたになります。すね(下腿)・前腕・手の甲・体幹に多く、特に中高年の方のすねと、乾燥する秋から冬にかけて増える傾向があります。若い方ではアトピー素因を背景に生じることもあります。

💡 名前の由来

「貨幣状」は硬貨(コイン)のような形という意味です。英語でも nummular eczema(ラテン語の nummus=硬貨)、あるいは discoid eczema と呼ばれます。形の名前であって、原因を示す言葉ではありません。

症状・見た目の特徴

項目貨幣状湿疹の特徴
形・大きさ円形〜楕円形、直径1〜5cm程度。境界がはっきりしている
色・表面赤〜赤褐色で盛り上がる。小さな丘疹・小水疱が集まり、じくじくした滲出液やかさぶたを伴う
かゆみ強い。夜間や入浴後、体が温まると増強しやすい
できやすい場所すね(下腿)・前腕・手の甲・体幹。左右にできることもある
1〜数個から始まり、掻くうちに増えることがある
季節空気が乾燥する秋〜冬に多い

初期は小さな赤いぶつぶつの集まりですが、次第に融合してコイン状の一枚の病変になります。慢性化すると表面が乾いて厚くなり、色素沈着を残すことがあります。

実際の皮膚所見(当院症例写真)

貨幣状湿疹の症例写真:足首にできた境界明瞭な円形の紅斑
足首/境界のはっきりした円形の紅斑。辺縁に小さな丘疹が集まっているのが分かります。貨幣状湿疹の典型的な見え方です。
貨幣状湿疹の症例写真:前腕にできたびらんと痂皮を伴う円形の湿疹
前腕/掻破によりびらん(ただれ)と痂皮(かさぶた)を生じた状態。じくじくしやすい時期の見え方です。
貨幣状湿疹の症例写真:すねにできた小さな円形の湿疹
すね(下腿)/直径1cm程度の小型病変。この段階では虫刺されやたむしと紛らわしいことがあります。

※掲載写真は当院で撮影した実際の皮膚所見です。掲載について患者さんの同意を得ています。治療前後の比較を示すものではなく、同様の経過を保証するものではありません。皮疹の見え方には個人差があります。

貨幣状湿疹の原因

貨幣状湿疹には「これひとつ」という単一の原因はなく、複数の要因が重なって生じると考えられています。中心にあるのは皮膚の乾燥によるバリア機能の低下です。

主な要因

  • 乾燥(皮脂欠乏)——加齢や冬の乾燥、洗いすぎで角層のバリアが壊れ、外部からの刺激に反応しやすくなります。すねは皮脂腺が少なく、最も乾燥しやすい部位です
  • 掻破(掻くこと)——かゆくて掻くと炎症が強まり、さらにかゆくなるという悪循環(itch-scratch cycle)に入ります
  • 虫刺され・外傷・やけどの跡——傷ついた部位を起点に、その場所だけ湿疹化することがあります
  • 細菌の関与——湿疹部の黄色ブドウ球菌が炎症を長引かせる要因になると考えられています
  • 下肢の血流のうっ滞——下腿静脈のうっ滞がある方では、うっ滞性皮膚炎と重なって難治になることがあります
  • アトピー素因——もともと湿疹をくり返しやすい体質の方に生じやすい傾向があります
⚠️ 悪化させる生活習慣
  • 熱いお湯での長風呂、ナイロンタオルでのこすり洗い
  • ボディソープの使いすぎ・洗浄力の強すぎる石けん
  • 暖房による室内の乾燥、電気毛布の使用
  • ウールなどチクチクする衣類の直接着用
  • 飲酒後や入浴後など、体が温まった状態で掻いてしまうこと

ストレスは原因になるのか

「ストレスが原因ですか」というご質問を非常によくいただきます。結論から申し上げると、ストレスが単独で貨幣状湿疹を起こすわけではありませんが、悪化させる要因にはなり得ます

ストレスや睡眠不足があると、無意識に掻く回数が増え、掻破による炎症が強まります。また、生活リズムの乱れによってスキンケアが疎かになったり、飲酒量が増えたりすることも、間接的に湿疹を長引かせます。実際の外来でも、繁忙期に悪化して落ち着くと軽快する、という経過をたどる方がいらっしゃいます。

ただし、ここを「ストレスのせいだから仕方ない」と結論づけてしまうと、本来手を打てるはずの乾燥対策や外用治療が後回しになります。ストレスは背景要因のひとつとして考え、治療の中心はあくまで皮膚そのものへの対応と捉えてください。

貨幣状湿疹は人にうつるのか

✅ 結論:貨幣状湿疹は人にうつりません

貨幣状湿疹は感染症ではなく、皮膚の炎症(湿疹)です。タオルの共有・入浴・接触で他人に伝染することはありません。ご家族やお子さんへの感染を心配する必要はありません。

ただし注意点があります。見た目が似ている皮膚疾患の中には、実際にうつるものがあるということです。たむし(体部白癬)は真菌の感染症で接触により伝染しますし、とびひ(伝染性膿痂疹)は細菌感染です。「うつらないはず」と自己判断したまま様子を見ることには、この取り違えのリスクがあります。

逆に「うつる病気かもしれない」と不安を抱えたまま過ごすのもつらいものです。顕微鏡で真菌の有無を確認すれば、その場ではっきりします。

たむし・その他の皮膚疾患との見分け

円形の赤い皮疹をつくる病気は複数あり、治療法が異なります。特に貨幣状湿疹とたむし(体部白癬)は、片方にはステロイド外用薬、もう片方には抗真菌薬という正反対の治療になるため、取り違えは悪化に直結します。

疾患特徴治療の方向性
貨幣状湿疹円形で全体が均一に赤く盛り上がる。じくじくしやすい。強いかゆみステロイド外用薬・保湿
たむし(体部白癬)中心が治って周辺だけ環状に盛り上がる傾向。境界に鱗屑(ふけ状の皮)抗真菌薬
乾癬厚い銀白色の鱗屑が重なる。頭部・肘・膝にも出やすい専用の外用薬・光線療法など
皮脂欠乏性湿疹乾燥した皮膚に亀甲状のひび割れと赤み。すねに多い保湿・ステロイド外用薬
うっ滞性皮膚炎下腿の色素沈着・むくみを伴う。慢性に経過圧迫療法・外用薬

※上記は一般的な傾向であり、実際には典型的でない見え方をすることが少なくありません。自己判断ではなく皮膚科での診察をおすすめします。

貨幣状湿疹でも「環状」に見えることがあります

上の表は一般的な傾向ですが、実際にはこの通りに分かれないことが少なくありません。貨幣状湿疹でも中心部が先に落ち着いて、周辺だけが赤く残り、輪のように見えることがあります。乾燥した皮膚を背景に生じた場合はなおさら判別が難しくなります。

環状に見える貨幣状湿疹の症例写真:乾燥した下腿にできた輪状の病変
下腿/環状に見える例/乾燥した皮膚を背景に、中心が抜けて輪のように見えています。見た目はたむしに近いものの、顕微鏡検査で真菌は認められず貨幣状湿疹と診断した症例です。

※掲載写真は当院で撮影した実際の皮膚所見です。掲載について患者さんの同意を得ています。治療前後の比較を示すものではなく、同様の経過を保証するものではありません。皮疹の見え方には個人差があります。

この症例のように、見た目だけで湿疹と白癬を切り分けようとすると、専門医でも判断に迷う場面があります。だからこそ顕微鏡で真菌の有無を直接確認することに意味があります。

当院では院内顕微鏡で当日鑑別します

当院は院内に顕微鏡を備えており、鱗屑を採取して真菌(白癬菌)の有無をその場で確認できます。外部の検査機関に出して結果を待つ必要がないため、受診したその日に「たむしなのか、湿疹なのか」を判断して治療を開始できます。

⚠️ 市販の水虫薬を自己判断で塗らないでください

貨幣状湿疹に抗真菌薬を塗ると、かぶれを起こしてさらに悪化することがあります。また、たむしにステロイドを塗ると真菌が広がり、見た目が不明瞭になって診断も難しくなります(異型白癬)。すでに市販薬を塗ってしまった場合は、受診時にその旨をお伝えください。判断の重要な材料になります。

貨幣状湿疹の治し方(治療法)

治療は①炎症を抑える外用薬 ②かゆみを抑える内服薬 ③再発を防ぐ保湿の3本柱で進めます。いずれも健康保険が適用されます。

1. ステロイド外用薬

治療の中心です。貨幣状湿疹は病変が厚く浸潤しているため、市販薬より強めのランクが必要になることが多く、部位(すね・体幹・顔)と皮疹の勢いに応じて選択します。改善に伴ってランクを段階的に下げ、最終的に保湿へ移行するのが基本の流れです。

2. 亜鉛華軟膏・保護剤

じくじくして滲出液が多い時期には、皮膚を保護し滲出液を吸収する亜鉛華軟膏を重ねて使うことがあります。掻破の物理的な防止にもつながります。

3. 抗ヒスタミン薬の内服

かゆみが強く睡眠が妨げられている場合、第二世代抗ヒスタミン薬を内服します。掻く回数を減らすこと自体が治療の一部です。

4. 抗菌薬(細菌感染をともなう場合)

じくじくが強く、厚い黄色いかさぶたがついている場合は細菌感染の合併が疑われます。この場合は抗菌薬の外用または内服を併用します。

5. 保湿によるバリアの回復

湿疹が治まった後も、乾燥した皮膚のままでは同じ場所に再発します。ヘパリン類似物質や白色ワセリンなどによる保湿を、症状がない時期にも継続することが再発予防の要です。入浴後5分以内の塗布が目安です。

難治例への対応

外用治療で十分な改善が得られない場合、当院ではまず診断そのものを見直します。白癬や疥癬が隠れていないかを顕微鏡で再確認し、外用薬自体によるかぶれ(接触皮膚炎)の可能性、下肢のうっ滞、細菌感染の合併なども含めて評価します。そのうえで、外用薬のランク変更や密封療法(ODT)、内服薬の併用を検討します。

市販薬で治せるのか

軽度であれば市販のステロイド外用薬で落ち着くこともありますが、貨幣状湿疹に関しては市販薬だけで対応することはおすすめしません。理由は3つあります。

  • 診断の取り違えリスク——たむしとの区別は見た目だけでは難しく、抗真菌薬を選んでしまうと悪化します
  • ランクが不足しやすい——貨幣状湿疹は浸潤が強く、市販薬に多いランクでは炎症を抑えきれないことがあります
  • 中断が早すぎる——見た目が改善した時点でやめると、皮膚の下の炎症が残っていて再燃します

「市販薬を2週間ほど使っても変わらない、あるいは広がっている」という場合は、それ以上続けずに受診してください。長引かせるほど色素沈着が残りやすくなります。

治らない・繰り返す場合に考えられること

治療をしていてもなかなか改善しない、あるいは同じ場所に何度も再発するという場合、次のような背景が隠れていることがあります。

考えられる背景対応の方向性
実は白癬(たむし)だった顕微鏡検査で確認。抗真菌薬へ切り替え
ステロイドの中止が早すぎる改善後も段階的に減らす。自己判断で中断しない
保湿を続けていない症状のない時期の保湿を治療の一部として継続
下肢のうっ滞があるうっ滞性皮膚炎としての対応を併用
外用薬自体によるかぶれ使用中の薬剤を確認し変更を検討
掻破が続いているかゆみ止め内服・爪の管理・冷却など掻破対策を強化
貨幣状湿疹の症例写真:慢性化して鱗屑と色素沈着を伴う下腿の病変
すね(下腿)/慢性期/表面が乾いて鱗屑(皮むけ)を伴い、色調がくすんでいます。長引くほど色素沈着を残しやすくなります。

再発をくり返す方ほど、「湿疹が出てから塗る」ではなく「出ていないときに保湿を続ける」発想への切り替えが効果を持ちます。

全身に広がってきたときは

貨幣状湿疹を掻いているうちに、もとの湿疹から離れた場所へ小さな発疹が次々に現れ、体幹や手足に左右対称に広がってくることがあります。これは自家感作性皮膚炎という状態で、貨幣状湿疹が発端となる代表的なパターンのひとつです。

貨幣状湿疹から周囲に小さな発疹が散布した下腿の症例写真
下腿/中心の病変がじくじくし、その周囲や下方へ小さな発疹が散らばり始めた状態。自家感作性皮膚炎へ移行しかけている段階です。

この段階になると外用薬だけでは抑えきれず、抗ヒスタミン薬の内服や、状況によっては短期間のステロイド内服が必要になることがあります。発熱やだるさをともなうこともあるため、広がりを自覚した時点で早めに受診してください。

まとめ

📋 この記事のポイント
  • 貨幣状湿疹はコイン状の円形湿疹で、乾燥と掻破が中心的な要因
  • 人にはうつらない。ただし、うつる病気(たむし・とびひ)と見た目が似ている
  • たむしとは治療薬が正反対。顕微鏡検査で切り分ける必要がある
  • 治療はステロイド外用・抗ヒスタミン薬・保湿の3本柱。保険が適用される
  • 掻いて全身に広がったら自家感作性皮膚炎への移行を疑う
  • 市販薬を2週間使って改善しない場合は皮膚科へ

「たむしか湿疹か分からない」段階でご相談ください

予約不要・当日受付・院内顕微鏡で当日鑑別

市販薬で様子を見ている間に悪化するケースが少なくありません。丸い湿疹が2週間以上続いているなら、一度診察にお越しください。

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よくある質問

貨幣状湿疹は人にうつりますか?
うつりません。貨幣状湿疹は感染症ではなく皮膚の炎症です。タオルの共有や入浴で伝染することはありません。ただし、たむし(体部白癬)やとびひなど、うつる皮膚疾患と見た目が似ているため、顕微鏡検査で確認することをおすすめします。
貨幣状湿疹の原因はストレスですか?
ストレス単独が原因になるわけではありません。中心にあるのは皮膚の乾燥とバリア機能の低下、そして掻破です。ただしストレスや睡眠不足は掻く回数を増やし、悪化要因として関与します。治療の中心は皮膚への対応とお考えください。
貨幣状湿疹は市販薬で治せますか?
おすすめしません。たむしとの取り違えで悪化する危険があること、市販薬ではステロイドのランクが不足しやすいことが理由です。市販薬を2週間ほど使っても改善しない、または広がっている場合は皮膚科を受診してください。
貨幣状湿疹とたむしはどう見分けますか?
たむしは中心が治って周辺だけ環状に盛り上がる傾向があり、境界にふけ状の鱗屑が付きます。ただし見た目だけでの判断は難しく、はっきりさせる方法は顕微鏡で真菌の有無を確認することです。当院では院内の顕微鏡で受診当日に確認できます。
貨幣状湿疹は何科を受診すればいいですか?
皮膚科を受診してください。当院は保険診療・予約不要で、受付時間内にそのままご来院いただけます。混雑状況により待ち時間が生じる場合があります。すでに市販薬を使用している場合は、薬の種類をお持ちいただくか受診時にお伝えください。
担当医師情報
駒沢皮膚科クリニック 清水顕院長
清水 顕(しみず あきら)
駒沢皮膚科クリニック 院長/医学博士
医療法人社団 誠清会 理事長
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

経歴
  • 山梨医科大学医学部(現・山梨大学医学部)卒業 / 同大学皮膚科入局
  • 同附属病院 救急科麻酔部にて全身管理を習得(研修医時代)
  • がん研究会がん研究所 生化学部 国内留学(皮膚がん発生メカニズム研究)
  • スウェーデン・ルードヴィック癌研究所 留学(国際共同研究)
  • 山梨医科大学附属病院 皮膚科 医局長 歴任
  • 2003年 駒沢皮膚科クリニック 開業(開業20年以上)

専門分野

皮膚がん・アトピー性皮膚炎・尋常性乾癬・掌蹠膿疱症・ニキビ・ニキビ跡・アレルギー性皮膚疾患・美容皮膚科


資格・所属学会
  • 医学博士
  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本皮膚科学会 会員
  • 日本臨床皮膚科学会 会員
  • 日本アレルギー学会 会員
  • 日本美容皮膚科学会 会員

担当医師より

貨幣状湿疹の外来で最も多いのが、「たむしだと思って市販の水虫薬を塗っていた」という経過です。逆に、たむしにステロイドを塗ってしまい、形が崩れて診断しづらくなった状態で来られる方もいます。円形の赤い皮疹は、見た目だけで区別しようとすると専門医でも迷うことがあります。だからこそ当院は院内に顕微鏡を置き、その場で真菌の有無を確認できるようにしています。すねの丸い湿疹がなかなか治らない、掻いていたら数が増えてきた——そうした段階で構いませんので、市販薬を続ける前に一度お立ち寄りください。

本ページは皮膚科専門医が監修しています。個別の症状・治療方針については、必ず医師の診察を受けた上でご自身でお決めください。(医療広告ガイドライン準拠)

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