ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは|肝斑・シミとの違いと治療法

皮膚科専門医 監修コラム

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは|肝斑・シミとの違いと治療法

公開日:2026年7月12日/更新日:2026年7月12日
駒沢皮膚科クリニック院長 清水顕医師
監修:清水 顕(日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医/医学博士) 医療法人社団 誠清会 駒沢皮膚科クリニック 院長

「シミだと思って市販の美白ケアを続けているのに、まったく薄くならない」——その左右対称のシミ、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)かもしれません。ADMは肝斑やそばかすと見た目が紛らわしく、複数の色素性病変が混在していることも珍しくありません。このコラムでは、ADMの特徴・肝斑との見分け方・治療の考え方を皮膚科専門医が解説します。

ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは

ADMは「Acquired Dermal Melanocytosis」の略で、日本語では「後天性真皮メラノサイトーシス」と呼ばれます。顔に左右対称に現れる典型的なタイプは、「ABNOM(Acquired Bilateral Nevus of Ota-like Macules)」「Hori斑(ホリ斑)」とも呼ばれます。このコラムでは、この顔に左右対称に現れるタイプを中心に解説します。思春期以降(多くは20〜40代)に、両頬などに左右対称に現れる、灰褐色〜青みがかった小さなシミが特徴です。

ポイント:メラニンの「深さ」が違う

一般的なシミ(老人性色素斑)は表皮の浅い層にメラニンがありますが、ADMはメラニンを作る細胞(メラノサイト)が真皮という深い層に存在します。この「深さ」が、見分け方と治療法を理解する鍵になります。

ADMの特徴・できやすい場所

  • 色調:灰褐色・青灰色・くすんだ茶色。単なる茶色より「くすんで見える」
  • 形:直径数mm程度の小さな斑が、点状に集まって現れることが多い
  • 場所:両頬骨のあたり、額の外側、こめかみ、鼻の脇、まぶたなどに左右対称
  • 時期:思春期以降に少しずつ出現し、はっきりしてくる
  • 境界:老人性色素斑のように輪郭がくっきりせず、ぼんやりしていることが多い

肝斑・そばかす・シミとの違い(見分け方)

ADMは特に肝斑と間違われやすく、治療の組み立てが変わるため、鑑別が非常に重要です。典型的な傾向を表にまとめます。

ADM肝斑老人性色素斑そばかす
メラニンの深さ真皮(深い)主に表皮表皮表皮
灰褐色・青灰色薄い褐色濃い褐色淡い褐色
形・分布小さな斑が点状・左右対称頬に面状・左右対称境界明瞭・単発が多い細かい点が散在
出やすい時期思春期以降20〜40代・妊娠や女性ホルモンが関与中年以降幼少期から
レーザー治療色素選択性レーザーが選択肢になる種類・照射条件により悪化する場合があり、慎重に判断反応しやすい反応しやすい

※典型的な傾向をまとめた表であり、この表だけで診断や治療方法を決めることはできません。実際の判断には診察が必要です。

⚠️ ADMと肝斑は「混在」することも

やっかいなことに、ADMと肝斑は同じ人の同じ頬に混在していることが珍しくありません。この場合、肝斑を悪化させないようにしながらADMを治療する、という繊細な組み立てが必要になります。見た目だけでの自己判断は難しく、専門医の診察が欠かせません。

なぜ市販ケアで薄くなりにくいのか

ADMのメラニンは真皮という深い層にあります。一方、市販の美白化粧品の有効成分が主に働きかけるのは表皮です。そのため、表皮向けの美白ケアを続けても、ADMそのものを消失させる効果は期待しにくいと考えられます。「頑張っているのに薄くならない」のは、ケアの努力が足りないのではなく、そもそもアプローチする層が違うためです。

なお、保湿や紫外線対策は治療前後の肌を整えるうえで重要です。また、市販のケアで変化がないことだけを根拠にADMと自己判断することもできません。肝斑・炎症後色素沈着など、ほかの色素性病変との鑑別を含めて診察で確認します。

ADMの治療法

ADMの治療は、診断のうえで真皮のメラニンに反応する色素選択性レーザーを検討するのが基本になります。

レーザー治療

メラニンに吸収されやすいルビーレーザー(波長694nm)などが用いられます。当院では、病変の分布・色調・肝斑などの混在・過去の治療歴を確認したうえで、点在するADMや広い範囲には面で照射するルビーフラクショナルレーザーを、範囲やタイプによってはQスイッチルビーレーザー(スポット照射)を、選択肢として検討します。多くの場合、まず1回照射して経過を確認し、濃さ・範囲によっては追加照射を検討します。

当院で治療する場合の費用・リスクの目安(自由診療)

ルビーフラクショナルレーザーは頬1回33,000円(税込)です。多くの場合1回の照射で経過を確認し、追加照射を行う場合も1回ごとに同額です。主なリスクは、一時的な赤み・点状のかさぶた・炎症後色素沈着(一時的に濃く見える場合を含む)のほか、頻度は高くありませんが色素脱失・水疱・熱傷・瘢痕、肝斑が混在する場合はその悪化、十分に薄くならない場合などです。適応・回数・総額は診察のうえでご案内します。詳細はルビーフラクショナルのページをご覧ください。

治療後の色素沈着に注意

ADMのレーザー治療では、照射後に一時的な炎症後色素沈着(茶色くなる)が起こることがあります。多くは時間とともに薄れますが、この時期の紫外線対策と、肝斑が混在する場合の慎重な管理が、仕上がりを左右します。

自己判断が難しい理由

⚠️ 判断を誤ると遠回りになることも
  • ADMを肝斑と誤認してレーザーを避け続ける → ADMは薄くならないまま
  • 肝斑をADMと誤認して刺激の強い治療をする → 肝斑が悪化することがある
  • 混在に気づかず片方だけ治療する → もう片方が目立ってしまう
  • 市販ケアや自己流ピーリングを続ける → 変化が乏しいうえ、刺激で色素沈着が増すことも

ADM・肝斑・老人性色素斑・そばかすは、皮膚科医でも見た目だけでは判断が難しいことがあり、必要に応じて肌診断機器や経過を踏まえて総合的に鑑別します。「左右対称のくすみがなかなか取れない」と感じたら、まず診断を受けることが、遠回りに見えて一番の近道です。

そのシミ、ADMかどうかは診察で分かります

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よくある質問

ADMと肝斑はどうやって見分けますか?
ADMは灰褐色・青灰色の小さな斑が点状に左右対称に出るのに対し、肝斑は薄い褐色が頬に面状に広がるのが典型です。ただし両者は混在することも多く、見た目だけの区別は専門医でも難しい場合があります。肌診断機器や経過を踏まえて総合的に判断するため、正確な鑑別には診察が必要です。
ADMは市販の美白化粧品で消えますか?
ADMのメラニンは真皮という深い層にあり、主に表皮に働きかける市販の美白化粧品では、ADMそのものを消失させる効果は期待しにくいと考えられます。診断のうえで、真皮の深さまで届くレーザー治療を検討するのが基本の選択肢になります。
ADMのレーザー治療は何回くらい必要ですか?
まず1回照射して経過を確認し、ADMの濃さ・範囲・肌質によっては追加照射をご提案する場合があります。肝斑が混在する場合はより慎重な計画が必要です。経過を見ながら診察でご案内します。
ADMは自然に治りますか?放置しても大丈夫ですか?
ADMは自然に消えることは基本的にありません。健康上の害があるものではないため、必ず治療しなければならないわけではありませんが、気になる場合は治療の対象になります。まずはシミの種類を正しく診断することをおすすめします。
ADMの治療で気をつけることはありますか?
レーザー治療後に一時的な色素沈着(茶色くなる)が起こることがあり、この時期の紫外線対策が特に重要です。まれに色素脱失や瘢痕が生じる場合もあります。また肝斑が混在している場合、刺激で肝斑が悪化しないよう治療を組み立てる必要があります。診断と治療計画を専門医と相談しながら進めることが大切です。
監修医師
駒沢皮膚科クリニック院長 清水顕医師
清水 顕(しみず あきら)
駒沢皮膚科クリニック 院長/医学博士
医療法人社団 誠清会 理事長
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医

資格・所属学会
  • 医学博士
  • 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
  • 日本皮膚科学会 会員
  • 日本臨床皮膚科学会 会員
  • 日本アレルギー学会 会員
  • 日本美容皮膚科学会 会員

研究業績
  • 血小板由来増殖因子(PDGF)と皮膚がん発生メカニズムに関する研究(文部科学省 科学研究費補助金 採択)
  • 隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)に関する研究(日本皮膚科学会 基礎医学研究費〈資生堂寄付〉受賞)

監修者より

「何年も美白ケアを続けているのに頬のくすみが取れない」という方の中に、ADMが隠れていることは少なくありません。ADMと肝斑の鑑別は、シミ治療で最も判断を要する場面のひとつで、混在しているケースも珍しくありません。大切なのは、流行の治療法を選ぶことではなく、まず自分のシミが何なのかを正しく知ることです。左右対称のくすみでお悩みなら、診断だけでもご来院ください。

本ページは皮膚科専門医が監修しています。個別の症状・治療方針については、必ず医師の診察を受けた上でご自身でお決めください。(医療広告ガイドライン準拠)