ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは|肝斑・シミとの違いと治療法
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは|肝斑・シミとの違いと治療法
「シミだと思って市販の美白ケアを続けているのに、まったく薄くならない」——その左右対称のシミ、ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)かもしれません。ADMは肝斑やそばかすと見た目が紛らわしく、複数の色素性病変が混在していることも珍しくありません。このコラムでは、ADMの特徴・肝斑との見分け方・治療の考え方を皮膚科専門医が解説します。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)とは
ADMは「Acquired Dermal Melanocytosis」の略で、日本語では「後天性真皮メラノサイトーシス」と呼ばれます。顔に左右対称に現れる典型的なタイプは、「ABNOM(Acquired Bilateral Nevus of Ota-like Macules)」「Hori斑(ホリ斑)」とも呼ばれます。このコラムでは、この顔に左右対称に現れるタイプを中心に解説します。思春期以降(多くは20〜40代)に、両頬などに左右対称に現れる、灰褐色〜青みがかった小さなシミが特徴です。
一般的なシミ(老人性色素斑)は表皮の浅い層にメラニンがありますが、ADMはメラニンを作る細胞(メラノサイト)が真皮という深い層に存在します。この「深さ」が、見分け方と治療法を理解する鍵になります。
ADMの特徴・できやすい場所
- 色調:灰褐色・青灰色・くすんだ茶色。単なる茶色より「くすんで見える」
- 形:直径数mm程度の小さな斑が、点状に集まって現れることが多い
- 場所:両頬骨のあたり、額の外側、こめかみ、鼻の脇、まぶたなどに左右対称
- 時期:思春期以降に少しずつ出現し、はっきりしてくる
- 境界:老人性色素斑のように輪郭がくっきりせず、ぼんやりしていることが多い
肝斑・そばかす・シミとの違い(見分け方)
ADMは特に肝斑と間違われやすく、治療の組み立てが変わるため、鑑別が非常に重要です。典型的な傾向を表にまとめます。
| ADM | 肝斑 | 老人性色素斑 | そばかす | |
|---|---|---|---|---|
| メラニンの深さ | 真皮(深い) | 主に表皮 | 表皮 | 表皮 |
| 色 | 灰褐色・青灰色 | 薄い褐色 | 濃い褐色 | 淡い褐色 |
| 形・分布 | 小さな斑が点状・左右対称 | 頬に面状・左右対称 | 境界明瞭・単発が多い | 細かい点が散在 |
| 出やすい時期 | 思春期以降 | 20〜40代・妊娠や女性ホルモンが関与 | 中年以降 | 幼少期から |
| レーザー治療 | 色素選択性レーザーが選択肢になる | 種類・照射条件により悪化する場合があり、慎重に判断 | 反応しやすい | 反応しやすい |
※典型的な傾向をまとめた表であり、この表だけで診断や治療方法を決めることはできません。実際の判断には診察が必要です。
やっかいなことに、ADMと肝斑は同じ人の同じ頬に混在していることが珍しくありません。この場合、肝斑を悪化させないようにしながらADMを治療する、という繊細な組み立てが必要になります。見た目だけでの自己判断は難しく、専門医の診察が欠かせません。
なぜ市販ケアで薄くなりにくいのか
ADMのメラニンは真皮という深い層にあります。一方、市販の美白化粧品の有効成分が主に働きかけるのは表皮です。そのため、表皮向けの美白ケアを続けても、ADMそのものを消失させる効果は期待しにくいと考えられます。「頑張っているのに薄くならない」のは、ケアの努力が足りないのではなく、そもそもアプローチする層が違うためです。
なお、保湿や紫外線対策は治療前後の肌を整えるうえで重要です。また、市販のケアで変化がないことだけを根拠にADMと自己判断することもできません。肝斑・炎症後色素沈着など、ほかの色素性病変との鑑別を含めて診察で確認します。
ADMの治療法
ADMの治療は、診断のうえで真皮のメラニンに反応する色素選択性レーザーを検討するのが基本になります。
レーザー治療
メラニンに吸収されやすいルビーレーザー(波長694nm)などが用いられます。当院では、病変の分布・色調・肝斑などの混在・過去の治療歴を確認したうえで、点在するADMや広い範囲には面で照射するルビーフラクショナルレーザーを、範囲やタイプによってはQスイッチルビーレーザー(スポット照射)を、選択肢として検討します。多くの場合、まず1回照射して経過を確認し、濃さ・範囲によっては追加照射を検討します。
ルビーフラクショナルレーザーは頬1回33,000円(税込)です。多くの場合1回の照射で経過を確認し、追加照射を行う場合も1回ごとに同額です。主なリスクは、一時的な赤み・点状のかさぶた・炎症後色素沈着(一時的に濃く見える場合を含む)のほか、頻度は高くありませんが色素脱失・水疱・熱傷・瘢痕、肝斑が混在する場合はその悪化、十分に薄くならない場合などです。適応・回数・総額は診察のうえでご案内します。詳細はルビーフラクショナルのページをご覧ください。
ADMのレーザー治療では、照射後に一時的な炎症後色素沈着(茶色くなる)が起こることがあります。多くは時間とともに薄れますが、この時期の紫外線対策と、肝斑が混在する場合の慎重な管理が、仕上がりを左右します。
自己判断が難しい理由
- ADMを肝斑と誤認してレーザーを避け続ける → ADMは薄くならないまま
- 肝斑をADMと誤認して刺激の強い治療をする → 肝斑が悪化することがある
- 混在に気づかず片方だけ治療する → もう片方が目立ってしまう
- 市販ケアや自己流ピーリングを続ける → 変化が乏しいうえ、刺激で色素沈着が増すことも
ADM・肝斑・老人性色素斑・そばかすは、皮膚科医でも見た目だけでは判断が難しいことがあり、必要に応じて肌診断機器や経過を踏まえて総合的に鑑別します。「左右対称のくすみがなかなか取れない」と感じたら、まず診断を受けることが、遠回りに見えて一番の近道です。
そのシミ、ADMかどうかは診察で分かります
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医療法人社団 誠清会 理事長
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 医学博士
- 日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
- 日本皮膚科学会 会員
- 日本臨床皮膚科学会 会員
- 日本アレルギー学会 会員
- 日本美容皮膚科学会 会員
- 血小板由来増殖因子(PDGF)と皮膚がん発生メカニズムに関する研究(文部科学省 科学研究費補助金 採択)
- 隆起性皮膚線維肉腫(DFSP)に関する研究(日本皮膚科学会 基礎医学研究費〈資生堂寄付〉受賞)
「何年も美白ケアを続けているのに頬のくすみが取れない」という方の中に、ADMが隠れていることは少なくありません。ADMと肝斑の鑑別は、シミ治療で最も判断を要する場面のひとつで、混在しているケースも珍しくありません。大切なのは、流行の治療法を選ぶことではなく、まず自分のシミが何なのかを正しく知ることです。左右対称のくすみでお悩みなら、診断だけでもご来院ください。






【美容施術時間】
▲=土曜午後/14:00〜17:00











